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03クローン病はどのように
検査・診断されるの?

監修 東邦大学医療センター佐倉病院
内科学講座 教授 松岡 克善 先生

下痢や腹痛が続くなどの症状からクローン病が疑われる場合でも、クローン病特有の症状ではないので、診断はできません。検査をおこない、粘膜の状態を確認するなど、総合的な判断から診断します。

クローン病は、
図のように
問診や検査の
結果から診断します

クローン病の診断の流れ
令和3年度 改訂版 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業. P33,(2022)をもとに作図

症状を感じたら病院や
クリニックを
受診しましょう

下痢や腹痛の症状が長く続くなど、気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。クローン病が疑われる場合、内視鏡検査が必要となります。実施できる医療機関や消化器を専門とする医療機関を紹介してもらい、検査を受けましょう。

専門の医療機関で
クローン病を診断するため
の検査をおこないます

内視鏡検査

クローン病を診断する上で必須となる検査です。先端にカメラが付いている、やわらかい細い管を体内に挿入して、腸の粘膜の様子を観察する検査です。クローン病が疑われた場合に、肛門から挿入する大腸内視鏡検査がおこなわれます。クローン病に特徴的な①縦走潰瘍(じゅうそうかいよう)、②敷石像(しきいしぞう)、③アフタなどがみられると、クローン病と診断されます。内視鏡検査を受ける際の注意点はこちらです。

大腸内視鏡検査

大腸の粘膜を観察するには、肛門から内視鏡を挿入します。粘膜の組織を採取して検査することもできます。

小腸内視鏡検査

クローン病の炎症が出やすい小腸の粘膜を観察するには、バルーンのついた特殊な内視鏡を使用します。小腸の上部を観察したいときは口から、下部を観察したいときは肛門から挿入します。

カプセル内視鏡検査

カメラのついたカプセルを飲む、カプセル内視鏡検査もあります。管を体内に入れるよりも体への負担が少ない検査方法です。飲み込んだカプセルが腸の中を移動しながら自動撮影します。

小腸内視鏡検査のイメージ
正常な腸とクローン病の
特徴的な粘膜
正常な腸の粘膜*
正常な腸の粘膜
①縦走潰瘍

腸の縦方向に沿ってできる潰瘍です。写真では、縦長に白く見える箇所です。

縦走潰瘍*
縦走潰瘍
②敷石像

石を敷き詰めたように見えることからこのように呼ばれます。大小さまざまな大きさの形に粘膜が盛り上がった状態です。

敷石像*
敷石像
③アフタ

口内炎のような潰瘍のことです。クローン病の初期病変としてよくみられます。

アフタ*
アフタ
*松岡 克善 先生ご提供

便の検査

便を検査することで、大腸や小腸からの出血や炎症の有無、便の中の細菌を調べることができます。

血液検査

炎症や貧血の有無、栄養状態の把握や合併症を見つけるために検査します。治療中は薬の副作用、炎症の有無や程度を把握するためにもおこないます。

炎症の有無や程度

CRP(C反応性タンパク)、LRG(ロイシンリッチα2グリコプロテイン)、赤血球沈降速度、白血球数、血小板数などを確認します。基準値より高い場合、炎症が起こっていることを疑います。

栄養状態

総タンパクやアルブミン、総コレステロールなどで確認します。基準値より低い場合、栄養を吸収できていないなど、栄養不良の可能性があります。

貧血

赤血球数やヘモグロビンで確認します。基準値より低い場合、貧血が疑われます。

副作用

AST、ALTやγ-GTPなどから肝機能、BUNやクレアチニンから腎機能を確認します。服用している薬によっては副作用がみられる場合があります。

その他の検査

内視鏡検査だけでは把握しきれない消化管全体の炎症や合併症を確認するため、小腸造影検査、便中カルプロテクチン検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などをおこなうことがあります。ただし、クローン病に特徴的な縦走潰瘍や敷石像などを見つけにくいため、確定診断に使用することはできません。

超音波検査とMRI検査のイメージ

診断

検査結果を総合的に判断して、クローン病や他の病気と診断されます。

内視鏡検査を受ける前に

検査に対して不安を感じたり、初めての検査で、気持ちが落ち着かなかったりすることがあるでしょう。安心して検査を受けられるよう、内視鏡検査ではどんなことをおこなうか、紹介します。検査について不安を感じたときは、担当医に相談しましょう。

内視鏡検査の流れ

検査前日の準備

内視鏡検査をおこなうためには、大腸を空にする必要があります。そのために、前日から食事や飲み物の摂り方に注意が必要です。

食事

検査前日の午後8時までは通常通りに食事を摂ることができます。検査前日に検査食を食べる場合があります。当日は朝から絶食で、腸管洗浄液を服用します。

飲み物

水、お茶などは飲んでも問題ありません。コーヒー、ジュース、乳製品などは胃腸に残ってしまうため、飲まないようにしましょう。

下剤

大腸に便が残っていると検査ができないため、下剤を服用して便をすべて出し切ります。日々の排便状況や年齢など、検査時間によって下剤の種類や服用するタイミングが変わります。

薬やサプリメント

薬やサプリメントを服用中の方は、事前に医師に知らせましょう。

検査後

お腹が張ってくる場合は、おならを出すと治まります。空の胃腸に急に食事を入れると消化不良を起こすので、消化のよいものをゆっくり食べるようにしましょう。辛いものなどの刺激物、アルコールは避けてください。

検査結果

当日又は後日、検査の結果を医師から聞きます。