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02クローン病はどんな症状が
あらわれるの?

監修 東邦大学医療センター佐倉病院
内科学講座 教授 松岡 克善 先生

クローン病の症状は、患者さんによってさまざまですが、多くの患者さんで、腹痛、下痢、体重減少、発熱がみられます。他にも肛門の症状があらわれる方もいます。

クローン病の
主な4つの症状は、
腹痛、
下痢、体重減少、発熱です

クローン病の診断時、患者さんの70%で腹痛と下痢の症状がみられます*。腸に潰瘍が起こるため腹痛があらわれ、また、食べ物の消化や栄養の吸収がうまくできず、下痢が起こります。この状態が長く続き、痩せて体重減少がみられる、というのが典型的な症状です。炎症の悪化に伴って発熱がみられる患者さんもいます。人によっては消化管の症状だけでなく、痔瘻(じろう)やきれ痔などの肛門の症状もみられます。なお、血便は潰瘍性大腸炎でよくみられますが、その割合はクローン病の患者さんの30%程度と比較的少なく、大量の出血はあまりみられません*。

*患者さんと家族のためのクローン病ガイドブック. 日本消化器病学会編. 南江堂, P8, (2011)

潰瘍:炎症を起こして粘膜が傷つき、さらに傷が深く、えぐれたものです。
血便:消化管を通る間に血液が混じった便のことです。目で血液を確認できるものから、便の中に混じり、検査で血便とわかるものまであります。

クローン病の症状の1つ、腹痛と下痢

肛門の症状も
多くの患者さんにみられます

クローン病の多くの患者さんで、肛門に以下の症状がみられます。クローン病に似た病態の潰瘍性大腸炎では、肛門の症状はあまり多くみられません。

肛門周囲膿瘍
(こうもんしゅういのうよう)

肛門の奥の小さい穴や、直腸の潰瘍から細菌が入り込み、細菌感染することで肛門周辺が化膿し、それにより発熱や腫れを引き起こしている状態です。

肛門周囲膿瘍
イメージ図

痔瘻(じろう)

肛門周囲膿瘍が進み、膿が出口を求めて通った後に、瘻管(ろうかん)と呼ばれるトンネルができ、皮膚と直腸が細長い穴でつながった状態です。痔瘻になると、瘻管から膿や便の汁が排出され、下着が汚れてしまうこと、肛門の周囲に腫れや痛みを伴うことが特徴です。

痔瘻
イメージ図

裂肛(れっこう)

きれ痔ともいわれます。肛門の出口付近の皮膚が切れた状態です。粘膜とは違い、皮膚には痛みを感じる神経が通っているので、強い痛みが伴います。

裂肛
イメージ図

クローン病の腸管合併症

消化管の炎症が長期間にわたると、さまざまな合併症が腸に起こってきます。腸の炎症を改善することで、こうした合併症を起こしにくい状態を維持することが期待できます。

腸管合併症

腸の炎症が進むと、腸管にダメージが蓄積することで腸管合併症が生じることがあります。場合によっては手術が必要となることがあります。

腸管合併症には狭窄、穿孔、瘻孔、肛門部病変などがあります。
イメージ図

クローン病の腸管外合併症

腸管以外の全身に症状があらわれることもあります。

腸管外合併症には、眼症状、アフタ性口内炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、関節炎などがあります。
イメージ図

クローン病は活動期と
寛解期を
くり返します

クローン病は炎症が強まる「活動期」と炎症が落ち着く「寛解期」をくり返しながら進行し、現在では原因がはっきりとわかっていないので、根治することのない病気です。クローン病の治療の目標は、炎症を起こしていない寛解期を長く保ち、再燃を防ぐことです。炎症をくり返すと、消化管へのダメージが蓄積していき、狭窄、瘻孔、膿瘍といった合併症が起こってきます。このような合併症は、薬では元に戻らないため、手術が必要になります。早期発見・早期治療によって、病気の早期から炎症をコントロールすることで、消化管ダメージの蓄積を抑え、合併症の出現を遅らせ、より長く安定した日常生活を送ることも可能です。

クローン病の進行による消化管へのダメージ

腸管外合併症には、眼症状、アフタ性口内炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、関節炎などがあります。
イメージ図
Colombel JF, et al.: Gastroenterology, 152(2): 351-361(2017)より改変

症状が再燃する要因は
人によって
さまざまです

薬で症状が落ち着いていても、また症状が強くなるようであれば、再燃と判断されます。再燃する理由はさまざまですが、以下のものが多いとされています。腹痛や下痢が増えてきたら我慢せず医療機関を受診しましょう。

薬の自己中断や飲み忘れのくり返し

症状がなくなると、自分の判断で薬をやめてしまう方や、飲み忘れが増えてしまう方がいます。決められた用法・用量を守らないと、再燃の可能性が高まるので注意しましょう。

風邪などの体調不良

風邪や感染性の胃腸炎など、体調不良をきっかけに症状が再燃するケースもあります。

食事

症状がなくなったからといって暴飲暴食をくり返してしまうと、再燃することがあります。1日3食のバランスのよい食事内容など、腸のはたらきを乱さないような食生活が理想です。

腸管の狭窄

腸管が狭窄している患者さんでは、腸管の内容物が詰まってしまう腸閉塞を起こす可能性がありますので、食物繊維の多い食べ物は控えるようにしましょう。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用

風邪や頭痛のときなどに使われる解熱鎮痛薬は、長期間服用を続けると再燃する可能性があるため、長期間の服薬が必要な場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

クローン病
セルフチェックリスト

【監修】東邦大学医療センター佐倉病院 内科学講座 教授 松岡 克善 先生
クローン病の早期発見を目的としたセルフチェックリストです。気になる症状がある方は、チェックをつけてみましょう。このチェックリストは、医師に相談する際に、症状を伝えるためのものです。診断結果をあらわすものではありません。正しい診断を受けるためには、医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。その際に、このチェックリストの結果を参考に医師に相談してみてください。

1 数週間~数カ月にわたり、腹痛が続いている
はい
いいえ
2 数週間~数カ月にわたり、下痢や
ゆるい便が続いている
はい
いいえ
3 数週間~数カ月にわたり、37.8℃以上の
発熱が続いている
はい
いいえ
4 排便時の痛みや、肛門に腫れや膿がある
はい
いいえ
5 便に血が付いていることがある、
又は排便時に血が出る
はい
いいえ
6 排便の回数が1日に6回以上ある
はい
いいえ
7 整腸剤や下痢止めを服用している
はい
いいえ
8 手指、足などの関節に
腫れがある、又は痛む
はい
いいえ
9 ダイエットをしていないのに、
急激に体重が減少した
はい
いいえ
10 舌や歯ぐきに白い口内炎ができている
はい
いいえ